・・+ 神薙's Story +・・  第3話 [ モンタギュー ]

作:りりさん

「ラバータ」

ピシィッ


その瞬間、大気が凍りついた!
恐ろしいほどの冷気の嵐が瞬間的に巻き起こり…。

「こ、これは…」

俺の目の前の奴を含めた、すべての敵が見事なまでの氷のオブジェと化していた。

「バータなのか…このとんでもない威力のテクニックが…?」

つぶやいた次の瞬間!

「えいっ、えいっ」
「ラフォイエ」


なんか緊張感のない、でも一生懸命さを感じる声と、抑揚の無い余計な力のこもらない声が聞こえ。

バスッ! バスッ!
ズガーーーーン!!!

オブジェたちをショットによる銃撃の衝撃と、激しい爆発による衝撃が粉々に打ち砕いた。

「い、今の攻撃は…!?」

呆然とした俺が倒れたまま首をめぐらせると、少し離れた場所にリクさんがへたり込んでいた。
無事みたいだな…、どうやら助かったか。



「君たち、無事かい?」

動けずにいる俺達に、今まで戦闘をしていたとは思えない気楽さで声が掛けられた。
声の方向は動けない俺の死角方向で、首だけ巡らせても見えない位置からだ。

「あんま無事じゃない」

答えた俺にハッとしたリクさんが駆け寄る。

「大丈夫? 今レスタするね」

「あんがとね。それよりりくさんこそ怪我ないか?」

「大丈夫です〜ってあう、神薙しゃん傷酷いよ〜=TwT=」

「レスタじゃ無理そうか?」

メディカルセンターのやっかいにはなりたくないなあ。

「ん、どれ、見せてくれたまえ」

先ほどの声の主(テクニックの声もこの声だった)が覗き込んできた。
フォニューム特有の広がりのある帽子を被っている。
ん、なんか見覚えある顔だな…。

「あ〜これは酷いね、今すぐ治療しないとね」

全然酷そうに聞こえないんだけど…。
って治療!? 今すぐ!? ここで!?

「この右腕を切り離して…ん〜代わりに〜…うん、このデルセイバーの腕を移植すればいいね!」

?? デルセイバー??

ふと横を見た俺は、視界の隅に恐ろしいモノを見てしまった(TT
さっき俺を切り倒した敵の腕(剣?)が、あの衝撃でも壊れずに彼の手の中にあった…。

「うおおおお!! ちょっと待て!! そんなモンくっつけるなぁ!! いででででででで!!」

「あ〜ホラホラ動かない。ウフフ、ちょっとしたジョークだよ神薙くん」

「へ? 俺を知ってるのか? と言うかその笑い方は…」

「先日はうちのエルノアがお世話になったそうだね、ぜひ礼を言わなきゃと思っていたんだよ」

え?
エルノアって前にマグ騒動とエネルギー切れ騒動で知り合いになったレイキャシールだよな。
俺の傍らに跪いて、心配そうに覗いてくるアンドロイドには見覚えがあった。

「こんにちはぁ、神薙さん、傷大丈夫ですかぁ?」

「い、いや、見ての通り動けねえよ」

「え、ええと…今治しますからぁ…、博士早くレスタ掛けてあげて下さい」

「もうかい? …ふむ、では移植は諦めるとしようか。良かったね神薙くん、
エルノアのお陰で不便な右手で生活しなくて済みそうだよ、ウフフ」


「エルノア居なかったら、やっぱ移植だったのかよ、俺…」



「驚いた…」

「凄いです〜=^w^=」

なんとレスタ一発で全快しちまったよ〜。
この、何度かシティで話した事のある若い博士は、エルノアの生みの親であるだけでなく
フォースとしての能力も相当すげ〜レベルにあるみたいだ。

「なあに、僕くらいの天才になると何でもない事なのさ。それより君たち二人がここに居た理由を教えてくれないかな」

「えと〜、りこさんのメッセージを頼りに来てみたです」

「消えたパイオニア1の乗員もここと関係してるような気がするんだよな」

「ふうむ…」

どうやらこのニューマンの若い博士の名はモンタギューと言うらしい。
シティで俺が見かけた時も、軍の人間らしい奴らがそれとなく見張ってたし、どうやらかなりの重要人物みたいだな。

「僕らは今回ここへ異常フォトンの漏出状況を計測するためにやってきたんだけどね。
思ったより状況は切迫しているようだよ、神薙くん」


「う、やっぱり異常フォトン危険なんかな?」

「それについてはエルノアに取りつけた計測機器のデータ解析をしてからになるね。
僕の考えたとおりなら、君達はここに長居しない方がいいだろうね」


「えと〜どうしてですか??」

「あ! りくさん、リューカー出してくれないかな〜」

「にゅ? 帰るの??」

「お、おう、すぐ帰らんといかん用事思い出したぞ」

「?? じゃリューカー出すね〜」

ほっ、これで聞かれないですむな…。
俺の考えが当っているかどうか、この博士なら答えてくれそうだ。
思いきって小声で尋ねてみた。

「なあ博士。ここの敵の中に随分と人型の奴らがいるんだけどさ、意味判るかな?」

顔色一つ変えず聞いていた博士は、小さく「ふむ…」と言ってから事も無げに答えた。

「つまりはそう言う事さ。君達は今どのくらいここに居るね? かなりの長時間だと言うなら、僕が即座に強制送還するよ」

「もう4〜5時間経つかな。どのくらいの時間が危険なのか知らんしね。何かの異常を感じてからでもと思ってたさ」

「正直な所、今回のデータを解析しないと目安となる時間は出せないね」

「しっかし、パイオニア1のみんな、どうしてわざわざこんな場所まで来ちまったんやら…?」

「恐らく軍に関しては、この奥にあるモノが目当てだったようだね」

「? モノ?」

「ん、ああ…今はこの悪性フォトンと関係した何か…とだけ言っておくよ」

「さっき通った通路に、軍の装備、それも相当な重装備までもがスクラップになってたけどさ、
そんなモン持ち込まにゃならんような何かがここに在るって事なんかな…?」


「在るのだろうね、そしてそれを手に入れようとして、こんな事態を生んだ…そう考えて間違いなさそうだよ」


「やっかい…と言うかシャレになんね〜よ。なあ、元に戻すことは、助けることは出来るのかな?」

「そうだね〜。天才である僕をもってしても難しいことや無理なことも、この世にはあるからね。少ないとは言えね、ウフフ」

「いや、うふふじゃなくて…。このままじゃパイオニア2はいつまでたっても降りられね〜だろ」

「やはり元凶を断つしかないのかも知れないね」

「元凶って何だ?」

皮肉げに肩をすくめる。

「それが判れば苦労は無いねえ。多少の見当は付いているとしても、やはり今後の調査と研究が必須と言うわけだよ、神薙くん」

「ここまで関わっちまったからにゃ、俺も手伝いたいけどな。だが、
できたら俺の相棒にはそこまで危険な目には合わせたくないんだよな」


「それは君達の判断だからね。まあ手伝ってくれると言うならありがたいさ。ぜひ依頼させて欲しいね、
君達は総督府子飼いのハンターと違って信用出来そうだ」


「まあ、また連絡してくれ。それまでにどうするか考えておくよ」


と、まあそんなこんなで遺跡探索は一旦打ち切り、モンタギュー博士との連携付きで再開することにしてお開きになった。





パイオニア2へと帰還した俺たちは、ひとまずそれぞれの家(と言っても割り当てられた部屋だけどね)で休息を取ってから、
シティで落ち合うこととなった。
シティには装備品などを預けておくチェックルームや、各種店舗、少し離れてメディカルセンターとハンターズギルドがある。
本当ならゆっくり飲み食い出来る場所がいいんだけどな〜。
そんな店、食料の調達も甘いモノを中心に厳しい管理をされている現状では、到底無理な相談だしね。

結局落ち合ったのは、胡散臭いオッサンの歩いているチェックルーム前の広場だった。

「あのな、りくさん」

「うん、なんですか〜?」

「あそこでメタメタになってたパイオニア1の軍さ…」

「う、うん」

「ありゃ〜俺たちハンターズの装備とは比較にならん重装備だろ?」

「うん〜パイオニア2は安全な場所への移民の予定だったですから、軍もハンターズもあんまり装備は持ってないですね〜」

「そそ。んでな〜、いくらあそこの敵が凶悪って言っても、あれだけの装備がやられちまうのって変だと思わん?」

「思うです。他にもっと凄い敵が居るのかな?」

「いや…。ちゃんと調べては無いけどね、どうも見た感じこっちの武器にやられてたっぽい」

「こっち? もしかして同じ軍の武器って事ですか?」

散々悩んだ挙句に、俺はリクさんに話す事にした。
いずれにせよ黙っている事がいつまで出来るか判らないのと、
俺たちが向かっている敵が相当ヤバイ存在らしいと知ってもらおうと思ったからだ。
その上で、これ以上関わるか考えて貰うべきだろうしね。

「つまりね、悪性のフォトンの影響だと思うんだが、軍の連中同士で殺し合い始めちまったって事らしいんだわ」

「…悪性のフォトンのせいでおかしくなちゃったってことですか?」

「うん。モンタギュのセンセも言ってたけど、長時間あれを浴びてたら俺たちだって危なかったかも知れないらしいよ

「そんな…大切な人どうしがころしあうですか…ヒドイです」

今にも泣き出しそうな声のリクさん(もう少し泣いてるみたいだ)に、これ以上言うのはキツイんだけどな。
でも、俺が言わないとな。

「それとな、俺の想像でしかないんだけど。…あそこの敵自体が元は人間だったんじゃないかってな…」

「!!」

「消えたパイオニア1の乗員…あそこに居た人型の敵…人同士殺しあったかも知れないってのに、一つも残っていない遺体…」

「でも…だって…わたしたち、あそこの敵…たくさん倒しちゃったよ…」

「うん、それ言うなら、りくさんより俺の方がよほど大勢殺してるよ」

「わたしたち、人を殺しちゃったの…?」

「何の飾りもなく、状況だけを言えばそうなるよ。俺は飾るつもりもないしね」

「……」

やっぱり、リクさんショック受けてる…。
でも、今言うか、でなければ一生言わないかだからな。
それなら俺は言うべきだと思う。

「ただね、俺は思ってる。人として…いや、生命としてだな…ありえないような最悪の変化に襲われた皆をさ、
そんなヒドイ状態でいなきゃならない時間をね、あそこでたち切ることが出来たんだって俺は思ってるよ」


「でも…」

「俺がもしもうちょっとあそこに居てさ。あんなになっちまって、りくさん襲い始めたりしたらって…、
考えただけで恐ろしくてたまらなくなるよ」


「そんな! 神薙しゃんはそんなことしないです!」

「気持ちだけで押さえることが出来るんならさ、俺は絶対にりくさん傷つけることなんかしない。
でもな、もしもそんな人の気持ちなんかお構いなしでおかしくなっちまうなら…」


想像するだけでも、恐ろしさとおぞましさで吐き気がしそうだ。
そして、それが現実に無数の人々に起きたことだとしたら…、
それはもう悲劇なんて言葉では到底言い表すことのできない最悪の現実だろう。

「そんな状態で生きているとしたら、俺は例え命と引き換えにしたって誰かに止めて貰いたいだろうね」

「りくも…きっとそうだと思うです…」

「一番良いのは、元の人としての姿と精神に戻すことなんだけど、あのセンセですら無理って事らしいからさ、
俺達に出来ることって本当に少ししか無いって事なんだよな」


「それって、あそこのみんなを…その、止めてあげるって事ですか?」

「ん。それもあるけどね。でも俺が一番やりたいのは、あの悪性フォトンの大もとを叩くことだよ」

「あ、そっか。それわりくも賛成です〜そんな悪いモノが出てるとこは、さっさとフタしちゃうです」

俺は一つため息をついた。
これから話すことが一番やっかいかも知れんね。

「んでな、りくさんに相談したいことがあるんだけどさ」

「うん」

「俺さ〜センセの依頼受けて、あの古代遺跡の中に入って来るつもりなんだよ」

「え、すぐにですか?」

「んにゃ、例のフォトン解析が終わってからだな。あそこに連続で長時間ってのも嫌だしね」

「りくも〜少し休みたいです〜」

「りくさんさ、今回は行くの止めないか?」

「え? 止めるって今日行くのを?」

「これからの遺跡探査全部だよ」
「! なんで!?」

「ハッキリ言うよ。今回だけは危険過ぎる。あんな恐ろしい悪性フォトンが高濃度で存在する場所と言うだけでも十分危険だけど、
その大もと、元凶がどんなモノかさえ判らんときてるしね」


「でもそこに神薙しゃんも行くんでしょ?」

「行くよ。もうここまで来たら端から傍観してるなんて出来ないよな」

「神薙しゃん、言ってることが矛盾してるですよ。危険だから行くなって言っておいて、自分だけが行くって…=TwT=」

「そだね、確かに矛盾してるよな。でもな、今回だけは聞いて欲しいんだよ。今、りくさんとも話した通り、
危険と一言で言えるような簡単な話じゃないだろ」


「りく頑張るよ。神薙しゃんとなら、これまで通りきっと無事に帰って来られる。そう信じてるです」

「…俺はな、りくさん。もしりくさんと一緒に死ぬことがあっても、納得できるって思ってるんだよ。
俺にとっては最高のパートナーだからな」


「じゃ、どうして危険な場所に一人で行くって言うですか?」

「一人とは限らんけどな。ただ、悪性フォトンの影響で同士討ちが起こっちまった時に…、
もちろん他のハンターとだって嫌だけどさ、これがりくさんとだったら…。俺には耐えられないぞ」


ハッとした顔になったリクさんに俺は続けた。
多分、思いは同じだろうな。

「だから今回だけは残って欲しい。俺そう簡単には変になったりしないからさ。
そしてな、例え仲間を殺すことになっても、俺は生きて帰るつもりだからな」

「神薙しゃん…」

リクさんは、少し下向いてからすぐ顔を上げた。

「りくも行くです。りくはね、神薙しゃんと一緒だって決めてるですよ。こんな大事な時に離れるつもりはないです〜」

「でもな…」

「神薙しゃんも知ってますよね。りくたちニューマンって寿命が安定してなくって、いつ寿命の終わりが来るか判らないんだって…」

「あ、ああ、知ってるよ」

「りくだって、それがいつなのか、自分でも判らないです。長くても…きっと神薙しゃんより先に寿命なのはまちがいないです。
それなら、りくは…。それまでの全部の時間を一緒に居たいです…」


「りくさん…」

「フォトンの影響わ〜、これからモンタギューはかせが対策してくれるって信じてるし。
遺跡のみんなも助けないとですから…それが悲しい方法でもです…」


リクさん…俺が思っていたよりずっと強かったんだな…。
俺は、自分の手でパイオニア1の皆を傷つけたのかもって思ったら、恐ろしくて堪らなかったのにな。
リクさんは、間違い無く俺以上にショックを受けてたのに、それでも進もうとしてる。

「じゃ、一緒に行こうな。俺が絶対守ってやる。んでもって背中はやっぱりくさんに任せたい。そう思ってるからさ」

「うん。まだ、心の整理が出来てないけどね…でもでも神薙しゃんと一緒にって事だけは、変わらないですから〜」

「そだね。今日はゆっくり休んでさ、頭ん中整理してから、細かいこと考えような」

「はいです〜」



これで…これで良かったんだよな。
俺の方こそ、しっかりしないとだ。

気合入れろ〜!!


「っしゃ〜〜!! やったるで!!」

「わっ」

ん?

「ふっぎ〜〜ん、ちょ、ちょ、ちょ〜〜、び、びっくりしたです〜=TwT=」

「うあ、ごめんな〜(^^;」

やっぱ要気合はリクさんかもな〜〜。






つづく♪


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